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岩月 輝希; 吉田 治生; 大貫 敏彦; 香西 直文
no journal, ,
北海道幌延地域の第3紀堆積岩中の地下水を対象として、微量元素の挙動にかかわる化学条件を調査するとともに、限外ろ過手法によりろ過溶液と微量元素濃度の相関について解析を行った。その結果、微量元素の存在形態について、(1)ろ過作業時の再現性や分析精度が悪く、ろ過サイズ依存性を解析できない元素,(2)分子量1万以下の粒子又は溶存イオンとして存在している元素,(3)分子量1万以下の粒子又は溶存イオンに加えて、特定のサイズのコロイドもしくは懸濁物を形成している可能性のある元素、の3種類に分類することができた。
丹羽 正和; 島田 耕史; 黒澤 英樹; 石丸 恒存; 小坂 英輝*
no journal, ,
活断層帯の直上では、大気中の数10倍以上の濃度の水素ガスの放出が報告されており、これらは断層活動で破壊された岩石鉱物の表面と水との反応によって発生した水素が起源であると言われている。本研究では、断層破砕帯において水素ガスが地下深部からどのように移動するかを明らかにすることを目的として、破砕帯の複数地点で、携帯型水素ガス検知器を使用した水素ガス濃度の測定を行った。その結果、破砕帯の中でも透水性の高い断層角礫やカタクレーサイトでは、毎分60ppm以上の高濃度の水素ガスが放出される一方、透水性の低い断層ガウジでは、健岩部中の割れ目と同様、水素ガスの放出が数ppm以下となることが明らかとなった。この結果は、地下深部で生成された水素ガスが地下水に溶解し、破砕帯中の高透水部に沿って地表付近まで運ばれてくるとの仮説を強く支持する。
梅田 浩司; 二ノ宮 淳; 根木 健之
no journal, ,
能登半島は、下-中部中新統及び鮮新統を主体とし、これらが先新第三系の飛騨変成岩,船津花崗岩類を覆っている。能登半島の温泉は、おもに第四紀以降に形成したと考えられる半島北縁部及び中部の北東-南西方向に伸びる断層・褶曲帯周辺に分布する。能登半島の広域的な地温勾配は40C/km以上と比較的高く、和倉(95C),栄和(60C),湯川(51C)等の高温泉も多く存在する。本研究では、能登半島の広域的なヘリウム同位体比の特徴を明らかにするため、半島全域の14の温泉を対象に温泉水・ガスを採取し、ヘリウム同位体比の測定を行った。その結果、能登半島に分布するほとんどの温泉のHe/He比は、大気と同程度あるいはそれ以下の値(0.031.2Ra; 1Ra=1.4e-6)を示ことから、伏在的な火成活動やスラブ起源の流体の上昇等に由来するようなマントル・ヘリウムの寄与は小さいと考えられる。また、高温泉の遊離ガスに含まれるHe濃度は極めて高いこと(0.4vol.%)や基盤の船津花崗岩類中には放射性鉱物を含むペグマタイトが認められることなどから、これらの温泉の熱源は、基盤岩中に含まれるU, Thの放射壊変によって生じた熱によって温められた深部流体が活構造帯に規制され局所的に上昇した可能性が考えられる。
齋藤 龍郎; 梅田 浩司
no journal, ,
鬼首・鳴子火山は、宮城県北西部に位置する第四紀火山で、鬼首カルデラを中心とした活発な地熱地帯を形成する。本研究では、マグマ貫入後の熱水系の時間発展過程を把握するため、熱量及び質量保存則に基づく感度解析を行った。シミュレーションでは、地下に球状のマグマ溜りが定置し、冷却して現在に至ったと想定し、マグマ溜りの深度,球の半径,貫入年代をパラメータとした温度構造の経時変化を計算した。解析結果については、地熱開発で掘削された地熱坑井データと内陸地震のcut-off depth(脆性・塑性境界と考えられ約400Cの等温面と推定されている)との比較・検討を行った。解析の結果、cut-off depthに相当する等温面と整合したのは、半径6.5kmのマグマ溜りを深度15kmに30万年間、定置させたケースとなった。また、地下1kmでの坑井温度,熱流束及び流体流速も坑井温度プロファイルから計算される実測値に整合する。以上のことから鬼首・鳴子火山下の現在の温度構造は、30万年前頃に地下15km付近に定置したマグマを熱源とするものと考えられる。
島田 耕史; 田中 秀実*; 廣川 智隆*; 齊藤 友比古*; 角森 史昭*
no journal, ,
断層は、地下からの物質移行経路であり、地震・断層活動に伴う断層帯の化学環境変化やその影響範囲を検討するうえで重要である。地下水に溶けて、断層を通過して地表に運ばれた地下深部起源ガスを連続観測するための高汎用性装置開発として、飛騨市宮川町の跡津川断層破砕帯中の地下水溶存ガスの連続観測を、市販の四重極型質量分析計を用い、試料採取・水蒸気除去・導入・測定までの装置の自動化を進めてきた。その結果、約100km離れた大地震(2007年能登半島地震)に同期する希ガス濃度比変動が捉えられるなどの、物質移行経路としての役割が検討可能になってきた。平成19年度のコールドトラップの改造により、地下水起源の水蒸気の影響を大気導入時の影響以下に抑えることに成功した。本装置は、揚水量やガス導入圧を自由に調節できるので、断層帯通過流体研究をさまざまな地域で進めるうえで有効と考えられる。発表では、装置の概要を、得られたデータとともに紹介する。
花室 孝広; 梅田 浩司; 前田 勝彦*
no journal, ,
紀伊半島南部地域の地熱活動に伴うと考えられる熱水変質帯の形成年代を把握するため、K-Ar年代測定,フィッション・トラック年代測定を実施した。また、地熱活動の温度や流体の成分に関する情報を得るため、温泉湧出箇所周辺や鉱床分布地域の変質帯に見られる変質鉱物を対象として流体包有物の均質化温度及び塩濃度測定を併せて実施した。各種年代測定の結果、セリサイトのK-Ar年代は、変質鉱物であるセリサイトが生成した年代を示すものと考えられ、近傍の火成活動との関連が考えられる。アパタイトのフィッション・トラック年代は、堆積後の埋没によるリセット(10Ma前後)に加えて、湯泉地や湯の峰では低温の地熱活動によるリセットと考えられるより若い年代(2.55Ma)を示す結果が得られた。流体包有物調査の結果、鉱脈鉱床の周辺では、中高温(200C),中高塩濃度(1wt%NaCl)の流体の関与が認められる一方で、本宮地域の変質帯である平治川地区では、これらの流体に加えて、低温(180C),低塩濃度(0.5wt%NaCl)の流体の関与も認められた。この低温・低塩濃度の流体は、湯泉地や湯の峰で見られる低温の地熱活動によるものである可能性が考えられる。
田力 正好; 安江 健一; 柳田 誠*; 須貝 俊彦; 守田 益宗*; 古澤 明*
no journal, ,
日本列島の中部山岳地帯以北(東北日本)では、第四紀の気候・海水準変動に連動して河床高度が変化していることが知られているが、西南日本においてはこのような河床変動はほとんど報告されていない。本研究では、西南日本の比較的小起伏の山地丘陵を流域とする庄内川(土岐川)沿いの河成段丘を対象とし、東北日本と同様な河床変動が生じているかを検討するために調査を行った。空中写真判読、C年代測定、火山灰分析、花粉分析を行い、段丘の形成時期と形成環境を推定した結果、庄内川流域の河成段丘は気候変動に連動した河床変動の結果として形成されたことがわかった。段丘面の比高から庄内川上流域の隆起速度を推定すると、最近約12万年間で10-20mとなり、流域内ではほとんど変化しない。濃尾傾動運動から予想される東方への隆起量の増加は認められないのは、上流域では下刻が隆起速度に追いついていないためと考えられる。
吉田 治生; 濱 克宏; 岩月 輝希
no journal, ,
瑞浪超深地層研究所では、現在、2本の立坑を深度200mまで掘削し、主立坑と換気立坑間を深度100mと200mで結ぶ水平坑道において、ボーリング調査などを行っている。各予備ステージの中間地点に地下水化学の地球化学調査を目的としたボーリング孔を掘削し、原位置圧力を保持しながら不活性雰囲気下での地下水のpHや酸化還元電位を測定するための水質モニタリングシステムを設置するとともに、換気立坑底部の深度約200mから530mに鉛直掘削したパイロットボーリング孔において、原位置の水圧を利用したコロイドろ過システムを構築し、コロイド/有機物,微生物特性の評価を行っている。本報告では、おもに、パイロットボーリング孔を利用した地下水の地球化学特性調査結果やろ過システムを用いたコロイド有機物特性調査の現状について報告する。
根木 健之; 梅田 浩司; 浅森 浩一
no journal, ,
MT法(Magnetotelluric Method:地磁気地電流法)は、従来から地熱資源開発,金属資源探査,石油探査等の分野で用いられているが、近年、深部地質環境を理解するための手法の一つとしても有効であると考えられている。しかしながら、MT法は自然電磁波を信号源としており、電気的ノイズの多い地域において、安定して高品質なデータを取得することが難しい。さらに今後は、市街地の拡大等に伴い、人工ノイズの高い地域での測定の機会が多くなることが予測される。このことから、MT法による地下深部の比抵抗構造調査を行う際には、測定されたデータの品質を客観的に評価し、そのうえで解析結果の信頼性を検討する必要性がある。本講演ではMT法における測定データの品質評価方法,測定データの品質が解析結果に与える影響,解析断面の信頼性評価方法について検討した結果を報告する。
山田 国見; 花室 孝広; 田上 高広*; 山田 隆二*; 梅田 浩司
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ウラン・トリウム・ヘリウム((U-Th)/He)法は既に20世紀初頭にラザフォードらによって発案されていたものの、岩石中でヘリウムが完全に保持されないことから特殊な例を除いて実用は不可能であると考えられていた。しかし、1987年、アパタイトの(U-Th)/He年代が非常に低い冷却温度に対応する冷却年代であると解釈できることが明らかになった。有用な年代測定法・熱年代測定法としての可能性が示されたことで(U-Th)/He法は1990年代を通じて急速な発展を見た。現在はその特徴から造山帯等に分布する地質体の冷却や削剥の速度推定や、活断層の運動に伴う熱異常の検出などに用いられている。日本原子力研究開発機構では、平成18年度より京都大学・防災科学技術研究所との共同研究として(U-Th)/He年代測定ラボの立ち上げを行っている。現在のところ、年代既知試料を用いて精度について10%程度、確度について20%程度を実現している。発表ではFish Canyon Tuff,丹沢トーナル岩等の年代既知試料の測定データについて議論を行う予定である。
石丸 恒存; 丹羽 正和; 島田 耕史; 黒澤 英樹; 守屋 俊文*
no journal, ,
断層活動は、断層面での変位・破砕に加えて、周辺岩盤に対して破断・変形といった力学的な影響を及ぼすとともに、水みちの形成や透水構造の変化など水理学的にも影響を及ぼすと考えられる。地層処分の立地選定においては、活断層として認定される断層は排除されることになるが、通常、活断層の周辺では地形リニアメントや破砕帯,割れ目等が分布しており、これらの構造について活断層本体の活動との関連性や水理学的な特性を把握することは、当該地域の地質環境の長期安定性を評価するうえで重要となる。このような観点から、原子力機構では、断層帯及びその周辺の広域的な破砕帯等の分布と特徴について検討するための事例的な調査研究を進めている。本講演では、横ずれの活断層である岐阜県の跡津川断層西部を事例対象とした地表調査の結果を紹介する。
二ノ宮 淳; 梅田 浩司; 根木 健之
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朝日山地は、新潟-山形県境のジュラ紀の堆積岩類,白亜紀から古第三紀の花崗岩類からなる。朝日山地には第四紀火山は分布しないが、東部の下部地殻-上部マントルには低比抵抗体が存在し、その縁辺部では深部低周波微動地震が発生していることから、低比抵抗体はマグマと考えられている。また、マグマ直上の花崗岩中では地殻内地震が発生しており、マグマから流体が放出され花崗岩中で地震を発生させていると考えられる。朝日山地の東縁の山形盆地断層帯では地震活動が活発であるのに対し、長井盆地西縁断層帯では地震活動が不活発である。これら断層活動と朝日山地下のマグマ活動との関連を検討するために温泉ガスのHe同位体比を分析し、朝日山地と山形盆地断層帯近傍で高く、長井盆地西縁断層帯近傍で低い結果となった。朝日山地では活断層が分布しないがマグマからの流体の活発な放出により温泉ガスにHeが付加されていると考えられる。山形盆地断層帯では断層活動に伴いHeが効率的に上昇していると考えられる。一方、長井盆地西縁断層帯ではHe源(マグマ)が地下に存在していても、Heが温泉ガスに付加されていない可能性が高い。
上原 真一*; 嶋本 利彦*; 舟木 泰智; 新里 忠史; 操上 広志; 大西 有三*; 松本 拓真*
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地下深部の透水特性を決定することは、地下流体循環,廃棄物地中処分,二酸化炭素地中貯留等さまざまな分野において極めて重要である。地下深部の浸透率分布を推定するうえで、亀裂や断層の影響をどのように評価するかは大きな課題のひとつである。原位置透水試験からは測定地点における透水特性を評価するうえで有用な情報が得られるが、原位置試験のみからそれ以深の性質を評価することは困難である。これに対し室内試験は、拘束圧を変化させて試験することで深さ10km以上の条件下での水理特性を推定することも可能である。本研究では、北海道幌延地域の新第三紀堆積岩を対象に、室内試験と原位置試験結果の比較を試みた。
浅森 浩一; 國友 孝洋; 中島 崇裕; 大原 英史*; 茂田 直孝; 渡辺 俊樹; 熊澤 峰夫
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幌延深地層研究計画の一環として実施している遠隔監視システムの開発では、ACROSS(精密制御定常信号システム)を地下施設の建設に伴う地質環境変化のモニタリングに応用することを目標とした研究開発を進めている。本研究開発では、これまでに地下研究施設周辺に電磁及び弾性波ACROSS送受信点を設置し、本システムが想定どおり機能することを確認した。今後は、本システムを用いて、地質環境の変化に対する応答特性の検討を行いつつ、データ処理・解析技術の高度化を図る。
前川 恵輔; 新里 忠史; 操上 広志; 浅森 浩一; 今井 久*; 塩崎 功*
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地層処分における安全評価は万年オーダーの長期に渡る期間を対象としている。こうした長期間で影響が顕在化する隆起・侵食や気候・海水準変動などの天然現象は、安全評価において重要となる地下深部の地下水流動や水質分布などに影響を与えることが考えられる。そのため、安全評価手法の信頼性を向上する観点においては、天然現象の長期的な変動が地質環境に与える影響を検討することが重要となっている。そこで、天然現象が地質環境に与える影響を理解するための一環として、気候・海水準変動が地下水流動に与える影響を、北海道幌延地域を事例として解析的に検討した。解析の結果、海水準変動に伴う陸部の地下水位や塩分濃度の空間分布の変化などが推定された。
常盤 哲也; 浅森 浩一; 新里 忠史; 安江 健一; 阿部 寛信; 前川 恵輔
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地震・断層活動が地層処分システムに及ぼす影響については、岩盤の破断・破砕に伴う廃棄体の破壊や地下水移行経路の形成などが考えられており、地層処分システムの安全評価に際して、対象とする地域における断層の活動様式やその履歴を把握することが重要である。本報告では、断層の活動履歴・活動様式を円滑に把握するためのデータフローを提示するとともに、北海道北部に位置する大曲断層を対象としたデータフローの適用事例を示す。今回作成したデータフローでは、断層の活動履歴・活動様式を把握する際に必要と考えられるデータ項目を挙げ、各データを取得するために必要な調査項目を抽出した。また、各データ項目の詳細と、それを得るために必要な各調査項目の詳細について、それらのつながりを整理した。このデータフローを、大曲断層を適用事例として現在までに取得したデータと照らし合わせた結果、大曲断層については、最終活動時期などに関する情報の欠如が認められた。今回作成したフローは、評価したい断層の活動履歴・活動様式に関する情報の過不足をスムーズに明確化することができ、必要な調査手法の選定にも資すると考える。
安江 健一; 田力 正好; 三枝 博光; 丹羽 正和; 黒澤 英樹; 草野 友宏
no journal, ,
放射性廃棄物の地層処分の安全性を確保するためには、隆起・侵食や気候変動などの天然現象の規模やそれらが引き起こす地質環境の変化を適切に考慮する必要がある。原子力機構では過去から現在までの地形や気候の変化を明らかにして将来の地形や気候の変化を予測する技術を整備するとともに、地殻変動及び気候・海水準変動が複合して引き起こす地下水流動の長期変化に関する解析手法の開発を進めている。特に内陸部を対象として、(1)古地形・古環境の復元調査技術の整備,(2)地形変化モデルの開発,(3)地質環境の変化を考慮した地下水流動解析手法の開発、に取り組んでいる。本発表では、これまで実施してきた技術開発のうち主要な成果について概略を報告する。
川村 淳; 大井 貴夫; 新里 忠史; 安江 健一; 牧野 仁史; 石丸 恒存; 笹尾 英嗣; 梅田 浩司; 瀬尾 俊弘; 柳川 玄永*; et al.
no journal, ,
日本原子力研究開発機構では、評価の拠り所となるシナリオを網羅的に整理したうえ、それらの重要性について理解しやすく提示するシナリオ解析手法の概念「総合評価作業フレーム」を整備した。本報告では、総合評価作業フレームに基づき、天然現象影響に関する重要度判定に必要となる情報の整備手法とその事例について検討した。その結果、地層処分の安全評価において重要な天然現象研究や地質環境に関するデータ・知見などについて、その過不足も含めた情報を効率的に整理できる見通しを得た。また、地質環境の長期安定性研究により過去から現在までの地質環境条件の変遷の把握、それに基づく将来予測の整備が行われているが、それらの研究成果を総合評価作業フレームに基づいて再整理することにより、ある検討地点で重点的に考慮すべき天然現象は何か、その現象により地質環境条件のTHMCGのうちどれが最も重要かなどを把握することができ、その結果に基づきその検討地点において考慮すべきシナリオの効率的な選択が可能となる見通しも得ることができた。
川村 淳; 大井 貴夫; 加藤 智子; 安江 健一; 新里 忠史; 常盤 哲也; 牧野 仁史; 石丸 恒存; 梅田 浩司; 笹尾 英嗣
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気候変動は、緩慢かつ広域的な現象であり、降水量や海水準の変化の要因の一つと考えられており、高レベル放射性廃棄物地層処分の安全性を評価するうえで考慮する必要がある。本検討では、気候変動を発端事象とする変動シナリオを具体的に構築することを課題として捉え、気候変動が地質環境に及ぼす影響への総合的な体系の適用の検討を目的とし、気候変動現象の取り扱い方やそれに関する情報の収集・整理方法,気候変動と地質環境条件の変化とを関係づける方法論について検討したので報告する。気候変動が表層及び地質環境に及ぼす主要な影響としては、「海水準及び涵養量の変化による表層から地下にわたる地下水の流動状態の変化」及び「降水量及び気温の変化による動植物の生態活動(生物圏)の変化」が考えられる。本検討では、気候の状態を代表する「指標」を設定し、その指標の変化を気候変動と見なすことにより、気候変動を発端事象とする変動シナリオの構築に資する情報を整備することとした。そこで、年平均気温と年降水量の2つの指標の2次元的な組合せで表現された気候区分を「場」と見なし、この場に応じた環境を参照できる地球上の地点に基づく情報を用いて気候変動が地質環境に及ぼす影響を把握する手法を検討した。本検討の結果、気候変動については年平均気温と年降水量を指標とすることにより、地表環境の変化も含めた地質環境の変遷を合理的に取り扱い可能との見通しを得た。また、地質環境条件の変化をTHMCG情報として収集・整理できる見通しを得た。
村上 亮*; 川村 淳; 大井 貴夫; 牧野 仁史; 西村 卓也*; 梅田 浩司; 瀬尾 俊弘
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本研究は、火山噴火シナリオ構築の具体的手法として、高レベル放射性廃棄物地層処分野で検討されてきたFEPを用いた手法を火山活動推移シナリオ構築に応用することに最大の特徴がある。火山活動進展に伴う火山の状態を示すものとして、地震計による火山性微動の増加,殻変動観測による火山体の膨張や火口付近の温度上昇などの観測結果や火口付近の水蒸気や火山性ガスの噴出量の増加、噴煙の発生など観察事実が得られる。それらの状態が進展する原因は、熱源としてのマグマの移動、マグマと地下水接触による地下水流動及び地下水質の変化、マグマの移動に起因する応力場の変化や地形形状の変化などの要因の相関関係から推定される。すなわち、火山活動進展の事象連鎖を追跡するシナリオを構成する要素として、観測・観察結果によって示される「状態: Feature」を、地下で発生している要因を「出来事: Event・過程・経過: Process」として関連づけることにより火山の噴火の推移を記述できると考えられる。このアプローチは、高レベル放射性廃棄物地層処分におけるFEPによる整理と同様の視点を有しており、火山噴火シナリオへの拡張の可能性を有している。そこで、上記に基づく予察的な検討として火山の噴火に関する既往の文献等から得られた火山噴火に関する情報を「Feature」,「Event」及び「Process」に分類・整理したうえ、FEPを用いたシナリオ構築手法の適用を試みた。その結果、これらの手法が火山噴火シナリオの構築に応用できる見通しを得た。